1【イチ】

7/8
前へ
/19ページ
次へ
「…お前は弾1発で、こいつの命を奪い、こいつを待っている家族を壊した。お前へにはその罪の重さがわからないのか」 俺の言葉に、少し驚いた顔をするとすぐにあっはっはと高らかに笑った。 「驚いた。まさかお前が罪の重さなんて語るとはなあ。お前に命の重さの何がわかる」 「…わかるさ、少なくともお前よりはな」 作り物の身体。 作り物の心。 作り物の頭。 「お前がそう作ったんだろうが。人の痛みがわかるように」 教授はしゃがみこむと、俺の顎を持ち上げてクックックッ、と笑う。 「あぁ…まさかここまで人間に寄った機体ができると思っていなかったよ。そのせいでお前は逃亡を測り、失敗作になってしまった。…なあ、0号」 「わかってるのか。お前は命を産んだんだよ。人のような身体で人のような心。でも…人間の言うことしか聞かないロボットにするのには、あんまりにも精神に干渉しすぎたんじゃないか?」 「そうだな。お前は人間によって作りすぎた。だが、あのまま行けば一花は世界初の成功例になっていたさ」 …信じられない。 いくら機械だとは言え、人と同じような心を持った機械を戦争の道具に使おうだなんて、よく考えられるものだ。 「一花をさらに人間らしく残酷にするためにお前を送り込んだのに。こんなことやらかしてくれやがってなあ」 「…俺も一花も生きているんだぞ」 「笑わせるな。全部作り物だぞ」 「それでも!」 喜び、怒り、悲しみ、楽しさ、寂しさ、苦しみ、辛さ。 一花は全ての感情を持っていた。 走り去る前、俺の目の前だ涙を流した。 「ー…生きてるんだよ!!」 教授を睨みながら叫ぶと、真顔になって立ち上がった。 「…馬鹿馬鹿しい」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加