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私は、1人だった。
生まれた頃から、物心着いた頃から、ずっと、ずっと。
真っ白な無機質な部屋で、たまに真っ白な白衣をきた先生が来る時間以外は、することもなくて1人で蹲っていた。
そんな色のない世界だった。
そんな世界に。
「ー…君が、一花ちゃん?」
彼が、現れた。
「…そうだけど。…あなたは、誰?」
彼は、私の真っ白な部屋で唯一、色を持っていた。
着ている服は黒色で、髪色は派手な青色。
手に持っている袋はピンクで、胸元に光ったネックレスは綺麗な銀色だった。
「ー…俺は零っていうんだ」
「れい…」
彼は私の目線に合わせて、しゃがみ込んだ
「一花ちゃんは、ずっと一人ぼっちだったんだよね」
「そうだよ。だから、何?」
「…寂しいって、思わなかった?」
…さび、しい?
「わかんない。気づいた時には1人だった。本でしか知らない、寂しいなんて気持ち」
「そっか」
彼はあっけらかんと言うと、にっこりと笑った。
「一花ちゃん、俺と遊ぼう」
「…遊ぶ?」
目を丸くして言うと、彼は頷いた。
「一花ちゃんが知らない世界を俺が見せてあげる。ずっと一緒にいてあげる。それがー…」
私が伸ばしかけた手を、ぎゅっと掴んで握った彼の瞳は、どこか悲しげで。
「それが、俺の存在意義だから」
彼は、そう言った。
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