Ai検査

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「じや、終わったら連絡くださーい」 と言うと2人の看護師はさっさと撮影室を出て行った。 取り残された気分… いまここにいるのは遺体と自分だけ。 なんとも不思議だ、さほど怖さは感じない、しいて感じるのは、少しの寂しさ。 依頼用紙の名前を装置に入力する。名前に見覚えがある。 外来で見かけたことがある、高齢のおばあさん…だな。 頭部を撮影し、ついで胸部、腹部を撮る。 真夜中の撮影室に装置の音だけがうなりのように響く。 撮影が終わり電話で連絡…がなかなか迎えがこない。 遅い… 呼びに行こうと思ったところで2人がせわしなくやって来る。 これから始まる死後の処置、体をきれいにして、体液が流れ出さないように体の穴に詰め物をする、その準備をしていたのかな? 「じや、移動しまーす。せーの」 3人で撮影台からストレッチャーに体を移動、その時はらと顔の白布が床に落ちる。 …きれいな顔、まるで眠っているような穏やかな表情 良かった…苦しまないで逝ったみたい と、生きている人の都合のいい考えが頭に浮かぶ。 テンションの高い2人の看護師に押されストレッチャーが撮影室を出て行く。 出口まで見送ると、家族の方が数名立っていて無言でお辞儀をする。     
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