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人間は、不思議だ。最近よく眠れてないせいか。先生の話を聞いていたら一瞬意識がとんだ。香菜子にツンツンされて目が覚めたが。
ニュースでは連日、太陽関係の報道がされている一方、学校の先生はそれを意図的に避けているんじゃないかってくらい、そういった話をしない。
放課後、弓道場に向かう。着替えを済ませて中に入ると、先輩が弓を引き絞っていた。すぐに放つことをせず、ためて、的の中央を狙う。まるで瞑想でもしているかのようだった。
いつもながらカッコいい。
私は、しばらくぽーっと見つめていた。
スパッと空気を切り裂く音がして弓が的に刺さる。弓は中心から少しブレたところに刺さった。
ふぅ、と先輩は肩で一つ息をした。
弓道場には、先輩と私以外誰もいない。世界滅亡の危機に弓道場に足を運ぶ、物好きばかりではないのだ。
「お疲れ様です。先輩」
私は声をかけた。
「北村か」
「こんな時まで、精神統一できるなんてすごいです」
「それは違う。こんな時だからこそだ。__最近、弓が迷うんだ」
「え?」
「今、何をするべきか、弓を引いている場合なのか、それならば何をしたらいいのか、俺は悩んでいる。だから弓が迷う」
先輩はぐっと拳を握りしめた。
「先輩でも悩むんですね」
「そりゃあそうさ」
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