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私は、その言葉に胸が詰まった。見たところ小学5年生くらいに見える。ああ、この子は世界が終わることを正しく理解しているのだ。
私たちは、大通りから、川べりの小道に降りる。遊歩道に出ると、川が冷たい風を運んでくる。明滅する太陽が水を照らしていて、幻想的な光景だった。
私は先輩を見上げた。
先輩の黒い髪と瞳も、光の加減によって深い紺色に見えた。
「静かですね」
「ああ、川、綺麗だな」
いつもとまるで変わった世界だ。私たちはまるで大きなアクアリウムに入れられた魚のよう。1日1日の密度が増して溺れ死んでしまいそうだった。
「先輩。私、さっき悲しかったんです。なんでこんな小さな子がって。自分も死んじゃうのに、悔しかったんです」
「北村……。お前は諦めていないんだな」
「え?」
「お前は強く、この終わりかけた世界で生きようとしている。それなのに、俺はさっき、あの子自身が言ったように、最後なら見知った連中と一緒にいて、そのまま終わればいいと思った。あの子が今日死のうと、明日死のうと変わりはないんじゃないかって、一瞬でも考えた」
「俺は、こんな自分が嫌いだ」
先輩は目を伏せている。
「私は、先輩が好きです。私に、現実を教えてくれて、今この場に一緒にいてくれる。この時間があるのは先輩のおかげです」
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