男の子

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その日は怖かったものの特に何かがある訳ではなく、出来事自体も忘れ掛けていた。 と言うのも季節は夏になり、仕事が忙しくなったから。毎日が目まぐるしく過ぎ、家に帰っては疲れてすぐに寝ると言った日々が続いていたある日だった。 「お姉ちゃん、またね~」 幼稚園くらいの男の子が手を振って帰っていく。 親子連れの対応を終え、ふぅと息を吐いた。マシになったと言えど、やはり疲れる。 さっきの親子が最終のお客であり、店の閉めをして帰ることにした。 夜の11時過ぎになると、辺りはひっそりとしている。その中で止まる車に乗り、ある物が目に入った。 ――フロントガラス上部にある、手形。 以前あったことを思い出し慌てて拭くが、消えない。 消えないことに一瞬焦るが、車から出て外から拭くと、手形は綺麗に消えた。 何だ、誰かのイタズラか。 亮介の時とは違って、明らかな誰かのイタズラにホッと安心した。
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