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しかし次の日も仕事を終えて車に乗ると、昨日と同じ所に手形が。
誰かのイタズラとしてもさすがに苛立ちを覚え、もぅ! と口にして外に出る。
忙しかった憂さを晴らすよう、力を込めて拭き、中に戻った。
「……消えてない……」
手形は消えていなかった。昨日と違って今度は、外ではなく中に付いていた。
言い様のない恐怖に包まれ、慌てて拭き取る。
自分が付けた覚えはない。だってこんな上部に付けるには、わざわざ運転席で立たなきゃいけない。そんな無意味なこと、誰がするのか――?
早く帰ろう。早く帰って、亮介の声が聞きたい。
エンジンを掛けようとして、でも掛けれない。何故か背後から人の視線を感じて、手が止まる。
恐る恐るルームミラーを見上げるが、細長い枠の中には何も映っていない。
……でも、確かに誰かがいる。
何故かは分からないけど確証があって、怖いくせに見ずにはいられない。
ハンドルを握る手を震わせながら、意を決して後ろに振り返った。
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