男の子

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そこには誰もいなかった。あるのは後部座席に置いた黄色い熊のぬいぐるみだけ。 私の勘違いか。誰かの視線は、もしかしたらぬいぐるみだったのかも。 恐怖は安堵に変わり、帰ろうと顔を正面に戻した。 「――ひっ……!」 さっきまではいなかった。いなかったものが目の前に、いる。 ダッシュボードに体育座りをした男の子は影のように真っ黒で、異様に目の部分だけが白い。 どうして男の子が車の中に? 小さいと言えど、ダッシュボードに人が座れる訳がない。 硬直し固まっている私に、男の子は口を開いた。 「――やっと。僕を見てくれた――」 「きゃぁぁぁぁ!!」
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