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気絶し、目を覚ますと朝になっていた。ダッシュボードの上はもちろん、後部座席には誰もいなかった。
何か体に異変が起こったり、怪我を負ったりもなく、夢を見ていたのだろうか? と思った。
いや……夢だと思い込むことにした。
それからは何もなかった。亮介のも、私のフロントガラスにも手形が付くことはなく、あの影のような男の子も現れることはなかった。
あの男の子は何だったのだろう?
その内この出来事は薄れ、次第に記憶から消えていく。
――そうして私達は3年の付き合いを得て、結婚した。
更に1年後。私は妊娠をして、7ヶ月を迎えた。
「亮介。お腹の子の性別が分かったよ」
腹部エコーを終えて、待ち合いで座っていた亮介に声を掛ける。
「どっちだった?」
逸る気持ちを抑え切れていない様子に、にこりと微笑んだ。
「――男の子だって。ハッキリ見えたから、間違いないよ」
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