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 当然、これまで彼と会うごとにそれについて訊ねてきた。どういう意味なのかと。  それに対し多月は一貫して、確証はないがそうだと思う、という言い方しかしない。  だから確証を二人で探そう、と。  確証を探すと言ったって、簡単にいくものじゃない。  当時の交通課が懸命に捜査に当たってくれたにも関わらず、結局犯人検挙に至らなかったというのに、それを二十年近く経った今、再度捜査し直すなんて途方もない話だし、協力者がいないと無理だ。  多月も自分だけでは調べきれないと思って七海に声をかけたのかもしれないし、単に情報を引き出す相手としてしか見ていなかったのかもしれないけど、どちらにしても七海にできることはほんの僅かだろう。  当時の交通課員に接触するべきだろうが、きっと多月がとっくに調べ上げて既に話も訊いているだろう。  その上でやはり犯人に行き当たらなかったからこそ今の今まで来ているはず。  それなら、これ以上調べても無意味ではないのか。  多月が調べたいのはおそらく、七海の父の事件ではない。自らの父の事件だろう。  多月の現在の父は多月恭一郎だが、昔彼自身が言った通り、実の親子ではない。  恭一郎の弟の敬二郎が実の父親だ。  当時彼も官僚として警視庁公安部に在籍していた。  敬二郎は七海の父の死から半年後に亡くなったと聞いている。服毒自殺で遺書もあったとのことだ。
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