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でも七海は多月の言いなりになったわけではなかった。警察に入れとも言われていないし、真犯人を探すにしても彼の協力を得ようとは考えていなくて、できるだけ自分一人の力でどうにかしたいと思っている。
だから、多月が接近してきても困る。
彼の駒として動くこともしたくないし、彼の求める情報も持ち得ていない。
それを何度となく伝えてきた。でも接触はやめてくれない。食事だのパーティーだのディナーだの様々なイベントに誘われるし、プレゼントも贈られるし、とにかくご機嫌取りを欠かさない。
要するに、多月は七海を個人的に気に入っているわけでもないし、部下として可愛がってくれているわけでもなく、ただ単に利用できる駒の一つとしてしか見ていない。
そんな相手に心を開けるはずもないし、好意を持てるはずがない。
利用できるだけ利用したらポイと捨てられるに決まっている。
あのとっかえひっかえして捨てられてきた令嬢たちのように。
彼女らとの交際は情報のためだと言っていた。嘘ではないだろう。各界から情報を仕入れるため、令嬢たちを利用している。
そうかもしれないと予想していたけど、でもそれは出世のためかと思っていた。
まさか父親の事件を調べるためだとは思わなかった。
それほどまでに彼を強く駆り立てるものは何だろう?
事件を調べて、真犯人を見つけたとして、それで多月は何を得たいのだろう?
配属されたばかりで仕事に慣れていくことに精いっぱいだからと先延ばしにしていたけれど、独自に調査を進めたほうがいいのかもしれない。
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