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 それがずっと引っかかっている。ひき逃げは実は交通事故の中で検挙率が高く、半数以上の犯人が捕まっている。  何故なら現場にかなり証拠が残されているし、各署交通課の中では重要事件として普通の事故以上にかなり綿密に捜査されるからだ。すると車種もすぐに突き止められるし、防犯カメラなども虱潰しに調べられ、車両がわかれば所有者もおのずと判明するというわけだ。  あと、警察内部に昔からある慣習として、警察官が被害者だった場合、捜査はかなり熱が入る。敵討ちのような感情を掻き立てられるのだと思う。  だが、それにも関わらず犯人を検挙するに至らなかったのだ。めずらしいケースだと当時の捜査に当たった交通課の警察官には謝罪されたのだと母から聞いている。  彼らが揃って言うからにはそういうことなのだろう。  でもその小さな疑念に大きな火を点けたのは、ある日唐突に囁かれた言葉のせいだ。  そこから七海の人生は大きく変えられたと言っていい。  警察官になって父の死を調べたいと思わされたきっかけは、それしかない。 「俺もやっと彼女とかできたって、仕事のこと言えないからいっつも浮気疑われるし、喧嘩になるし。女と付き合うこと自体難しいっつうか」
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