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「おーい、残念な知らせがある! 経産省官僚贈収賄の件は没! 捜査終了!」
そこで第四知能犯一係の係長 東谷が席に戻ってくるなり、唐突に、そして投げやりに告げてきた。
宮沢も七海も唖然とした。
捜査終了って。
確か半年前からこつこつと地道に調査しつづけていた官僚の贈収賄疑惑だと聞いている。七海も今月から捜査に加わっていた。
そのために聴き込みも張り込みも報告書も色々いっぱい手間暇かけたのに。
こんなことがあるのか。これが本庁勤務というやつか。
「係長、捜査終了ってまさかどこかに抜かれたんですか?」
宮沢が訊ねると、東谷は悲壮感いっぱいにうなずいた。
「ああ。特捜部に抜かれた」
特捜!
二人だけでなく二係の人間も葬式のように落ち込んでいる。合同で手掛けていた事案だったからだ。
「特捜かー! あいつら寝てないんじゃないの?」
「寝てないだろうな。そうでもないとあの人数で立て続けに立件することは不可能だ」
「エースの手柄ですか?」
「らしいな。彼が手をつけたら必ず検挙できると聞いている」
「ていうかあの水落ってエース、裏で合法ギリギリの汚い手段使ってるって聞きますよ」
「検事だから法律に詳しいし、法の目をくぐるっていうのか、そういうのが上手いんだろう。合法どころか違法な司法取引でもしていそうだが、証拠がないから誰もつつけない」
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