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 だから水落のことはきっと警察の中では誰よりも知っている。  いや、もう一人同じ状況の者がいたか。彼の方が七海よりも熟知している。  だって警視総監は今も生きているから。 「絶対隠蔽して上手いことやってるだけでしょ。組対や麻取並に夜の街うろついてるって聞くし、暴力団と繋がってますよね?」 「そうかもしれんが、下っ端から情報を引き出すくらいで繋がりがあるとするかどうかは微妙だな。検挙数を上げられるなら悪いことじゃないだろう。ヤクザや暴力団と深い繋がりがあって、彼らの口利きをしているとか特捜の情報を漏らしているとなれば問題だが、そうじゃないならむしろ上手く情報を引き出せているという評価にもなる」 「特捜がそこまでする必要ってあります?」 「そこまでしているのは彼くらいのものだろうな」 「だって俺らにそれやれって言われたらまあ無理ですよ」 「そこまでやれとは誰も言ってない。正直、告発状を全部調べていくだけで骨だからな」 「何でそこまでするんだろ、あのエースは」  それはわからない。本人に訊かない限りは。  でも何となくならわかる。上手く説明できないが、きっと彼は必死で生きている。  違法まがいのことをしてでも、何かをやり遂げようとしている。
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