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「ねえ、そんなことはどうでもいいから自白してよ。それともこのまま特捜部に強制捜査に入ってもらう?」
父もこちらを睨むようにして、動かない。
先に口を開いたのは水落だった。
「え、いやいや待って。多月、それはまずい。拳銃はまずい」
そう言う割に力づくで奪おうともしない。実に落ち着いている。
流石に水落は修羅場に慣れている。
一家心中にも立ち会ったし、こないだは焼身自殺の現場でも説得に成功したんだって?
自殺する人間ばかり見てきたんだね。何の因果かな。今度は君の双子が自殺しようとしているよ。
「…じゃあ正直に言おう。もし私の言うことが保身や偽善だと思うのなら撃てばいい。二十年前のひき逃げは、確かにおまえの言う通り、七海くんが私を庇って亡くなった。部下を持つおまえならわかるだろう。どれだけの悔しさがあったか」
そこで父が静かに語り始めた。
自白か?
「堀川議員は当時暴力団組織との繋がりがあり、自分が指示しなくてもそちらが勝手に動いて捜査員たちやその家族を殺しかねない、と脅してきた」
「あんた警察だろう。それで尻尾撒いて逃げたのか」
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