11

25/50
前へ
/429ページ
次へ
「既に一人死んでいる。それに捜査を続けたとして、それを先方に嗅ぎつけられているのだから、起訴できるほどの証拠にありつけるとも思わなかった。堀川議員は恐ろしい男だった。だから水落くんの家族、雨宮議員一家も陥れられ、心中にまで追い込まれたんじゃないか」 「……」 「つまり一人ではない。合計六人亡くなっている。自分の家族だけでなく、捜査員の家族にまで被害が及ぶことを考えたら…とても私が責任を取れる問題ではないと思った。もう誰も殺したくないと思った」 「……」 「だから裏取引を交わしたわけではないが、捜査から手を引いた。そしておまえたちも不審がっていただろうが、当時の捜査員の家族たちを定期的にこの家に招いてディナーやパーティを催したのは、彼らの安全を確認するためだった。誰も被害を受けていないか。平和に暮らせているかどうか」 「……」 「ひき逃げの口止めをしたのは、堀川議員に捜査が及ぶと部下たちやその家族を守れなくなると思ったからだ。それが違法だ不正だ裏取引だと言われたら否定できない。私もそれは当然承知している。しかし上に立つ以上は責任が生じる。ただお山の大将でいたらいいものではない。下に人間がいるなら、それは人柱ではなく守るべき存在だ」 「……」
/429ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5492人が本棚に入れています
本棚に追加