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「何も言い訳はしない。特捜部が乗り込むというなら構わない。それ以降私は不正という不正は行っていない。あったとしても別の人間が起こしたものだ。私は関与していない」
断言するからにはそれ相応の自信があるのだろう。
そうだ、その通りだ。十年かけても大した不正を見つけられなかった。だからいつまでも告発できずにいた。
最近のものもあると言ったが、それは父の名前を使って行われた収賄だ。父本人が関与したという裏付けが取れなかったから、今日この場でどうにかして自白させたかった。
「しかし二十年前のことで既に時効になっていると言っても、罪は罪だ。だから私は警視総監の職を辞する」
警視総監の職を辞する?
その言葉を待っていた。
やっと、やっと負かせた。
ずっと自分の真上に君臨していた王を跪かせることができた。
勝った。
勝ったんだ。
嬉しいだろう。それを望んでいたのだから。そう言わせたかったのだから。
それが人生の目標だったのだから。それが果たせたら死んでもいいと思っていたのだから。
どうだ、喜べ。笑え。喝采を上げろ。
どうした?
何故喜ばない?
何故笑わない?
声高々と勝鬨を上げればいいのに。
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