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「…っ…」  拳銃を床に落とした。  わざとじゃない。全身の強張りがきかなかった。指先は麻痺したみたいに感覚がない。  ガチャガチャ、と無機質で重い音が室内に響き渡る。  両手で顔を隠した。震えていた足元から崩れ落ちた。涙が止まらない。もう限界だ。  自分は強くない。弱い。  好きな人を助けられる力もない。非力だ。  何で、どうして、こんなにも弱い?  どうしたら良かった?  どうすれば。  何をすれば。  答えが見つからない。  見つけられない。  好きなのに。  こんなに好きなのに、何もできないのか。 「…あなたが死んだら…俺だってもう…生きられ…な…」  俺だって、生きていけない。  それは嗚咽となり、言葉にならなかった。  そこで同じように床に音が響いた。  ガチャガチャと。乾いた音だった。ひどく虚無的に室内に響いた。  七海のものではない拳銃が床に落ちたのだとわかった。 「…ごめんね」  そして床にへたりこんだ七海を何かが包み込むように抱きしめてきた。  昨日と同じぬくもり。  温かい。  生きている。  生きて、ここにいてくれる。 「もう君を傷つけたくない」  そう言って、抱きしめる力を強めた。 「僕が必要なのは、自由じゃなくて君だった」  君と生きたい。  これからもずっと。  そう言っているように聞こえた。
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