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脅えさせてしまった。大切な人をここまで傷つけ、心配させ、つらい想いをさせてしまった。
自分が死ねばさらに彼を追い詰めることになったのだろう。
だからきっと、死なないで良かったのだろう。
この選択は間違っていなかったのだろう。
「何で死ぬのをやめたのか訊かないの?」
「…もうその話、やめていいですか」
聴きたくない。そう言っているも同然に拒絶された。
死について考えさせたくない。もう二度とそんな考えは起こさないで欲しい。そう言っているかのようだった。
「その話、一生しないでください」
「一生傍にいてくれるの?」
「……」
そこでまた黙った。いつもは困らせたり動揺させたり赤くさせるために言っている。
でも今はそうじゃない。本心からそれを願うから問うている。
「責任を取れってことですか?」
また堅苦しい言葉が出てきた。いつもつんけんして、怒っているようにサバサバと突っぱねてくる。
そういうところを水落は扱いに困っていたようだった。
そういうところがいいのに、と思う。
「何の責任?」
「止めたことの、です」
「死ぬのを止めたこと? 君に止められたからやめたんじゃない。僕がそうしたかった」
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