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「…ん…っ」  きっとそんな反応をしてしまう自分がたまらなく嫌で、屈辱的な気分に陥っている。男なのに、と思っている。まだこうされることに抵抗感があって、男であることを捨てたくない。でも快楽の波に足を取られて、あっという間に攫われていく様も見てとれる。まだ苦痛のほうがましだと思っている。気持ちいいと感じる自分がおぞましいと思っている。  そんな引け目を取り去ってあげることはできないのかな。ただでさえコンプレックスでいっぱいでこちらを妬んでいるから下手に慰めると物でも投げつけられかねない。 「抱かれるのは嫌?」  囁くとぎくりとしたようにこちらを見上げてきた。不安の色が滲んでいる瞳を、それでもまた逸らす。 「…課長が死なずに済むなら何でもするって決めたから」  そう。自分の中で揺るぎない決め事をしていたんだね。だから嫌だとかしたくないなんて言えない。  でもそんなふうに自分を追い詰めなくていいんだよ。僕がそう思わせてしまった。ごめんね。どうすればいつもの君を取り戻せるんだろう。  何もしなくても、仮に一指たりとも触れさせなくてもいいんだよ。いつもの君でいいんだよ。何も変える必要はなくて、そこに何の理由も有しない。
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