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「何を逃げようとしているの?」
色んな言い訳をつけて逃げようとしているのを勘づき、それを問いながらも、多月はやめてくれない。裸にされた胸を吸われるとびくびくと痙攣を起こすみたいに反応した。誰でもなく自分の身体が。男の身体が。男なのに。男に愛撫されて感じている。男なのに。男じゃないのか自分は。
「…は…っ、あ…」
熱い息を漏らす。快感で、だ。どうかしているなどというレベルではない。性転換手術をしたわけでもないのにどうしてこうなる。おかしいだろう。多月は何の疑問もないのだろうか。自分の技術力に自信があるのか。まあそうだろう。そうでもなければ男を抱いて快感を得ようという発想にならない。自分は男でも抱ける、喘がせられる自信がある、とでも思っているのだろう。
色々ごちゃごちゃと自分の中で理屈や言い訳を考えていないと、快楽に呑まれて痴態をさらす一方になってしまう。
昨日でさえ、思い出したくもないけど、思い出したくもないことをされて、思い出したくもない声を出して、思い出したくもないほど感じてしまった。
多月だから、多月を助けるために、身を捧げるような気持ちでそれをして、つまり仕方ない事情だと理由づけをしていたからこそ行為に及べた。
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