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そう思っているのか。ちょっとぞっとするけど、許してくれているならおそらくそういうことなのだろう。
待て、水落もか? いや、彼は明らかにむっとしていた。じゃあ多月だけか、重病人は。
「宮沢さんって課長がいない日はここぞとばかりにそういう話しますね」
「当たり前だろ。普段話してたら聞こえちゃうじゃんか。いくら席が離れてるっていっても」
「でも課長がいないからってあんまり変なこと言ってたら誰かが聞いてて告げ口されるんじゃないですか。査定に響きますよ」
「あ、それもそうだな。ここで言うのはやめとこ」
素直に聞き入れてくれて事なきを得た。宮沢は時々どきりとする指摘をしてくるが、根が単純なのでまだ扱いやすい。誰かみたいに複雑な性格の人間はとても気疲れする。
しかしそういう多月が好きなのだろう。今の宮沢の指摘ではないが『まあ仕方ないか。そういうところが好きだし』と自分も思っているということなのだろう。
ああ悪寒がする。だが男である彼を好きなのだからそういうことだ。受け入れていかなければならない。そういう相手も。そういう自分も。難しそうだ。やはり色んなプライドを切り崩しながらやっていく必要があるようだ。
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