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それ以外にしてほしい、と言われたとしても、じゃあもう思いつかないとしか言いようがない。勝手にしてくれ、となる。
多月は沈黙した。
こちらに向けていた視線をまた景色のほうへと移動させた。
「二課にずっといられるわけじゃないよ」
「知ってます。異動があるのはお互いさまです」
「都内にいられる君と違って僕の場合、地方にだって赴任する可能性がある」
「それは他の業種でも同じことです」
「特捜部はあまり異動しない」
「特捜部に入りたいんですか」
「絶対嫌だよ」
多月は笑った。屈託がなかったから安堵する。
「このまま警察に残ってトップの地位に就いてしまったらどうするの」
「じゃあやればいいじゃないですか」
「簡単に言うね」
「官僚の仕事は嫌ですか」
「嫌だよ」
「二課の仕事は嫌ですか」
「それは嫌じゃない」
そう言うと思っていた。だから七海も笑う。やっている仕事は同じだ。官僚と思うと嫌気がさす。でも陣頭指揮を執る業務は面白い。そんなややもすると矛盾した多月の考えはよくわかる。そして理解できる。
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