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「まあいいか。君と毎日職場で会えるなら」
投げやりに言われたけど、むっとはしない。何故だろうか。
それでもその声音に希望と喜びが満ちていることだけはわかった。
「だからって職場で変なことしないでくださいね。セクハラですから」
釘を刺すと多月は苦笑して、注意した先からキスをしてきた。
あーもう! だからそれだよ。それだって言ってるのに!
顔面が真っ赤になったのは夕陽を浴びているせい。そう自分に言い訳しながら、多月の胸に頬を寄せた。
心臓の音が聴こえる。
ずっとこうしていたい。ずっと、傍で。
幸福感に浸っていると、多月がすっぽり包み込むように抱きしめてきた。
「可愛いな」
その楽しそうな笑いを含んだ台詞に、ますますかーっと顔が熱くなる。
「それもセクハラですからね。部下に可愛いとか言うの、セクハラです!」
「何でもかんでもセクハラになるなんて、同じ職場って面倒だね」
「そもそもサッカーのユニホームで可愛いとか何ですか。意味わかりません」
「サッカーのユニホームが可愛いんじゃないよ。君がコスプレしてるのが可愛いって意味だよ」
「コスプレじゃないですから! 仕事ですから!」
そういう意味で言っていたのか。というか仕事中に何を考えているんだ!
「そうか。君に色んな場所に潜入させてそのつどコスプレさせるのもいいね」
「はあ!?」
「うん。やっぱり警察の仕事も悪くないな」
にっこり笑う多月に反発しようとしたが、できなかった。再びキスによってくちびるを塞がれたからだ。
だからそれ! セクハラだって言ってるでしょうが!
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