王様の子

１３

　突然名指しされてぎょっとする。
　項目は全部埋められたはずだ。何か失態を犯しただろうか。冷や汗が滲む。
「対象者に近づくべくサッカーチームに所属してサッカーを頑張っていたようで。ユニホーム一式は捜査費で足りなかったでしょう。自腹を切ったんでしょうか。まだ新人で安月給なのに。めちゃくちゃ安月給なのに！　こういうところに税金が使われて然るべきなのに国の予算組みはどうなっているんでしょう。摘発した政治家に常に訴えているんですがね。でも逮捕された議員なんでほとんどが失職していてあんまり意味がないですけどね。つーかおまえらの給料こっち回せよって思ってますけどね。まあそれはみんな思ってますよね」
　安月給安月給ってうるさいな！　そりゃあんたはどうせこっちより相当高い給料でしょうけど。
　というか多月とだって相当の差があるのだった。ああそういうことを考えるとますますやっていられない。
「あれ、何か怒った顔してますね。安月給に怒ってますか？」
「別に怒っていません。実際安月給なので」
「安月給ながら捜査に身銭を切る精神、素晴らしい！　しかも項目を全部埋めているばかりか、細かく対象者の情報を列記してくれています。丁寧な仕事ぶりに称賛を贈りたい。皆さんも是非参考になさってください。…というわけで、今後もこのように結果がいい係と悪い係をピックアップしてご紹介します。お楽しみに！　あ、ふざけすぎて怒られました。早く進行しろこの馬鹿水落と言われました」
　やはり特捜部の中でも水落につっこむ者がいるようだ。馬鹿水落と言ってくれてすっきりする。