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幅広い石を組み上げた階段を上り楠の樹に軽く手を添えるともう一つの入り口を見つけた。古びた戸をそっと押すと、ぎぎぎ・・・と見た目通りの音がした。
真ん中にポンプ式の井戸がある中庭。
庭の広さは玲子の家のリビングほどの広さだから十五畳くらいだろうか。
ビルの谷間に日差しが入る唯一の時間、所狭しと植えられた植物たちは光合成に余念がない。
光を受け生を謳歌する植物たちと病床で苦しんでいる祖母の面影が何故だか重なった。
「ごめんください。森羅堂さんいらっしゃいますか?私、六星イチ子の孫娘です」
ポケットの中で木製の割符がチリンと綺麗な音を立てた。
その音に呼応して植物たちがざわめき始める。
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