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『幽薬専門 森羅堂 壱。魔女の孫娘』 1.生薬の庭
【幽薬専門 森羅堂 ①魔女の孫娘 】
①生薬の庭
歓楽街の片隅。路地奥に進むと湿った空気が流れてきた。ここは海に近く満潮時には川から潮の匂いがする。夜になれば鮮やかな衣装の女たちが溢れるこの街も、昼日中は閑散と静まり返っていた。
【幽薬専門 森羅堂】と書かれた看板を見つけ六星玲子(ろくほし れいこ)は大きく息を吐いた。高校の制服のままこの歓楽街に来てしまった事を後悔してもすでに遅い。一刻も早く薬を手に入れて祖母が待つ病室へ向かいたかった。
正面の入り口はスチールサッシの引き戸で、軽く手をかけてみたが、ガタガタいうばかりで鍵がかかっているようだ。ガラス戸から店内を覗いてみると白と黒のブチ猫がカウンターの上で丸くなって寝ていた。
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