2.魔女のキス

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2.魔女のキス

②魔女のキス 玲子がどんなに下ろしてくれと頼んでも森羅堂は言う事を聞かなかった。確かに魔女のキスで魂を吸い上げた手ごたえがあったのに、これでは効き目が弱そうだった。 「何度でも忠告しますよ。ぼくのラボを踏み荒らしたら毒蛇をけしかけますので」 「ラボってこの庭の事?」 「そう。ここに植えられている生薬は全てこの地の精霊に護られて育っているのですよ。本来なら悪条件の潮風にさらされながら、どこまで生育できるか。日光もビルに邪魔されて昼間三時間しか当たらない。だが古来先人から伝えられた薬草・薬樹は悪条件でこそ本来持つ薬能を強めるのです」 「はあ・・・それでラボなのね・・・」 「ちなみにきみがこのラボに入る時に潜り戸を不用意に開けたせいでノキシノブが台無しになったんですよ。ここ三年の間に大事に育ててきたと言うのに。がさつな魔女が侵入してきたせいで新芽が折れてしまったではないですか」 玲子は抱き上げられたまま潜り戸を振りかえった。 茅葺きの小さな屋根には確かにノキシノブが生えていた。
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