◆14◆ 優しさに祝福を

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    小さな命を抱いていてようやく判る。確かに自分もこうして抱かれていたのだと言う現実。 「若狭さん?」  涙を流すので驚いた。 「すみません・・・なんか、泣けてきます。」  ゆっくりとベッドに戻し溢れる涙をぬぐう。   「明日、また見送りに来ますからここへ来たことは、伏せておいて下さい。」 「はい。明日、お待ちしてます。」 「ばいばい。」  小さな命に手を振ってエレベーターホールへと向かった。体力の落ちた今の自分には、車椅子の一漕ぎが辛い。 「っ、ゴホッ!!」  咳が急に出て止まらない。身体が大きく揺れる。  ガタンッ!! 「っ、最悪・・・やることが、あるのに・・・・・・」  車椅子から床に滑り落ちて幾度目かの咳の後、意識を失った。   
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