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「最近は医局に来ないね。どこで媚を売ってるのかな」
嫌味を言われて私は、
「……他の科を回っております」
と返した。
谷口先生はすっと目を細めた。そして手をくるりと回した。
「ちょっと回ってみてごらん」
「はい?」
私は意味が分からず問い返す。鈴木が何やらスマホをいじるのが目の端に入った。
「その場で回ってごらんよ」
谷口先生はにやにやと笑いながらもう一度言った。私は訳が分からなかったがくるっと回った。
「お尻が小さくなったね。胸はますます大きくなったんじゃない? 誰かに揉まれてるのかな? 循環器の先生と仲が良いと聞いてるよ。やっぱり女のMRは信用ならないね」
谷口先生の言葉に、その場の空気が凍りついた。私は羞恥にかあっと全身が熱くなるのを感じた。そのとき。
「鈴木さんはそんなことしてません! 彼女は僕と結婚を前提に付き合ってますから!」
鈴木が顔を怒りに赤く染めて言い放っていた。
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