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エレベーターホールで待っているとき、咳が出てしまう。借りているアパート近くの病院に行ったけれど、もう一週間も咳が止まらない。
「鈴木さん、もう風邪ひいてからだいぶなるよね? 大丈夫?」
今野さんも心配して声をかけてきた。
「病院は患者さんがいるから、どうしても風邪やほかの病気をもらいやすいんだよね。でも、マスクして営業するわけにもいかないしね。治らないなら病院に行ったほうがいいよ?」
「あ、はい。病院には行ったのですけれど……治らなくて」
今野さんはちょっと考えて、
「大学の先生に診てもらったら?」
と言った。
「え?」
私は動揺した。
「大丈夫、僕も診てもらったことあるし、頼めば診てくれるよ」
そういう問題ではなく、大学のドクターに診られるというのが恥ずかしいと思ったのだ。
でも。大学病院で診てもらうなんてなかなかないし、何より治るかもしれないし。
私は迷った挙句診てもらうことにした。問題は誰に診てもらうかだ。営業が難攻している竹部先生と塩屋先生のどちらかに診てもらってそれをネタに少しは距離を縮めるか。
否。正直あの二人のドクターには診てもらいたくなかった。
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