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大学在籍時代に一番繋がりのあった講師と、偶然同じ場所に居合わせた。その時、学費が払えなくなり除籍されてから既に二年の月日が経っていた。 彼は僕を見つけると、紙コップ二つを両手に一つずつ持って、親しげに僕に近づいてきた。そのことに僕が驚いていると、持っていた紙コップを一つ、僕に手渡して言った。 「君さえ良ければ、また大学に顔を出しに来るといい」 そういえば彼は僕が大学にいた時も、こうして紙コップにコーヒーを淹れていた。紙コップの中身を啜る彼を見て、僕も同じくそれを試みた。僕は彼がそれをくれたことが、なんだかとても嬉しかった。しかしそれをいくら傾けても、何も啜ることは出来なかった。僕に手渡された紙コップには、何も入っていなかったのだ。僕は彼が話している間、ずっとその底を見つめていた。微かにコーヒーの染みがあるような気がした。しばらくたって、彼はその中身を飲み干すと、それを片手で握り潰した。君もそれを飲み終えたなら自分のと一緒に捨ててやろう。彼は言葉にしなかったが、そう手を差し出して、初めから空だった僕の紙コップを握り潰して持って行った。
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