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あなただけの新聞
ピンポーンというチャイム音で目が覚めた。
日曜日の朝7時のことである。
非常識すぎるとまでは言わないが、そこそこには常識不足。
私は寝ぼけ半分な頭のまま、ふらふらと玄関に近づきドアスコープを覗き込む。
扉の向こうにはピシっとしたスーツ姿の30代くらいの男。
十中八九、飛び込み営業であろう。
『居留守するか・・・』
私は心の中でそうつぶやき、音を立てずに再び二度寝を決め込もうとしたが、不注意にも段差に足をぶつけてしまった。
ドンと静まり返った朝の空間に鈍い音が響き、それと同時に扉の前の男はさわやかに挨拶をする。
「ごめんくださーい」
『チッ・・・』
こうなってしまってはさすがに居留守は通用しない。
私小さく舌打ちしてから玄関の扉を開けた。
「なんですか・・・?」
私ができる限り嫌そうな反応を浮かべても、営業マンの笑みには一切変化がない。
「あっ!おはようございます!実は私こういうものでして・・・」
手渡された名刺には新聞会社の名前が載っていた。
「すみません。新聞ならもう取ってるんで、勧誘なら要りません」
とっさに嘘をついたが、つい先日までは実際に取っていたので強ち間違いでもない。
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