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「あ!実は当社が扱っている商品は少し変わったものでして、もし別の新聞を取られていても内容は一切被りませんのでご安心ください」
「それはスポーツ新聞とかいうオチですか?」
私が見え透いた展開を口にすると、営業マンはすでに浮かべていた笑みを更に上塗りしたような気味の悪い笑みを浮かべた。
「いえいえ、当社が扱うのはあなたの為だけの新聞です」
・・・
「いいお部屋ですねぇ~」
少しだけ興味を持ってしまったのが、運の尽き。
営業マンはここぞとばかりに匠な話術を展開し、結局部屋にまで入られてしまった。
「ただの賃貸ですよ」
私は小さくため息を付く。
「あ。そういうことではなくてですね、部屋の趣味が非常に私好みなんです。何か
楽器をやっていますよね?」
確かに押入れにはギターがしまってあるが、アンプをほっぽり出しているわけでも、ピックがその辺に転がっているわけでもない。
「ギターを弾きますけど、どうしてわかったんですか?」
「ステレオにお金がかかっています。私もそうなんです。専ら鍵盤を叩くことが専門ですけれども」
営業マンはそう言って机を鍵盤代わりに引くような仕草をしてみせた。
大した観察力の持ち主だと私は素直にそう思った。
「それで?カスタム新聞てのは何なんですか?」
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