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秋の風が感じられるようになった頃、僕はまだ話したこともなかった女子と隣になった。小学三年生となり初めてのクラス替え、人見知りの僕には半月以上たっていても話したことのない奴なんて沢山いた。
だからと言ってわざわざ話しかけることもなく、人見知りながらに話しかけるのを待っていた。だが隣にいる彼女も人見知りなのか、僕に話しかけてくることはなかった。確かに、眼鏡のログヘアという容姿で、天真爛漫でフレンドリーなタイプの人間ではなかった。下手すりゃ僕よりも暗い方だろう。
そんなある日、驚くべきことに彼女は僕に話しかけてきたのだ。
「ごめん、教科書忘れちゃったみたいから見せてくれない?」
「あ、うん、どうぞ」
「ありがとう」
初めての会話がこんなものだとは思いにも寄らず、なんだか少し違和感を覚えた僕だったが、その反面なんだかちょっと嬉しかった。
そして、その日を境に少しずつではあるが、彼女と話すようになっていった。
「ねぇ聞いて、この間ピンクの服着たのおじさんが犬にピンクの服着せて散歩してたの」
「あ、僕も見たことある!」
「え、本当?」
などといった本当になんの目的もない、まさしく他愛も無い会話をしていた。驚くべきことに彼女の性格は明るく、第一印象からは到底想像もつかないほどよく笑う人だった。
そして一年経って小学四年生。彼女とはよく話すようになり、僕はいつの間にか彼女のことを異性として気になり始めていた。
「ねえ、テスト何点だった?」
「87点」
「うわ、私と一緒!」
ただテストの点数が同じってだけなのに、彼女と同じというだけでとても嬉しかった。
「この曲っていいよね」
「だよね、私もこの曲好き」
たとえどれだけ些細なことでも、彼女との共通点はうれしいものだった。
そうか、これが恋なのか。
そしてこの気持ちのまま二回目クラス替え。小学校の残り二年をどんなメンバーと過ごすことになるのか、仲のいい奴と一緒なのか嫌いな奴と一緒なのか、期待が膨らむ。そんな中僕は彼女と一緒になれたかだろうかという不安でいっぱいだった。
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