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「代表」  すっと上がった手には、固い決意が込められていた。 「その交渉の席にはぜひ僕も呼んでください。三か国語ほど自由に操ることができますので、お役に立てると思います。一度、海外の同業者とコンタクトしたいと、前々から思っていました。ドラキュラ伯爵や狼男といった正統派に加えて、ここ二十年ほどの間に、ゾンビもすっかりと人々に浸透しました。こういった新たなキャラクターにも対抗して行かなければならないのです。夏は幽霊の独占事業ではありません。競合他社の動きから吸収できるものは吸収していく努力も必要です」 「そうですね。国内でも妖怪コーポレーションとのコラボを打診してますので、ここは一気にグローバルな展開に持ちこむことも視野に入れていきましょう」  すべてが解決したわけではなかったが、出席者の誰もが、目の前に迫った夏へと力をみなぎらせていた。 「世の中の流れが昔よりも早く、戸惑うことも多いですが、日本の夏のため、今年もどうぞ、よろしくお願いします。それでは、今夏の成功と、今後の皆さまのご健康を祈念いたしまして、一本締めをいたします。皆さま、お手を拝借。いよおおおおおお」  パンパンパン パンパンパン パンパンパン パン。 「ありがとうございました」  パチパチパチパチパチパチ。
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