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例えば、登校中。 「岩井、オッハー!」 いきなり背中をドンと叩かれる。 急に金髪不良が現れたことで、周りの人はこちらを避ける。 結果、まるでモーゼが海を割ったかのように人々が引き、 私たちの目の前には、一本の道があらわれていた。 「あれ、なんか人、いなくね?」 「……それはあなたのせいでしょう?」 「え、俺のせいなの?あ、わかった。 みんな俺たちが通りやすいように、道空けてくれたんだな。やさしー! 俺もさ、朝ちゃんと学校行くの久しぶりなんだけど、 みんなこんなに優しかったんだな!」 不良はそういうと、歯をむき出しにして、満面の笑みをこちらに向けた。 ……なんて無防備な人なんだろう。 私はうつむき、足を速めた。
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