語り部の実力

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寝苦しい真夏の夜は、身の毛もよだつ怖い話で涼をとる為、テレビでは色々な怪奇番組が企画される。 でも昨今の怪奇番組は「ヤラセ」がバレバレで全然怖くない。 怪奇ネタを聴いていても、語り手が下手過ぎる。 早口で捲し立て「わー!」だの「ぎゃー!」だの何を言っているのか全然分からない。 怪談は淡々と語るのが怖いのだ。 しかし、巷に溢れる朗読は淡々とし過ぎていてこれまた怖くない。 本当に上手い声優さんの朗読は怖いのかも知れないけど。 怪奇小説や恐怖漫画も一度読んでしまえば、怖いのはその時だけで。 読み返してはみるものの、一度体験すればその怖さに慣れてしまう。 色々注文が多いが、それがオーディエンスという者。 ホラーマニアの私としては、夜な夜な色々な番組、映画、アプリなどのメディアで真の恐怖を求めてさ迷っている。 因みに一番怖い映画と聞かれれば「エクソシスト」を挙げる。 今の様に特撮が発達していなかった頃なのに、心の奥底をざわめかせる恐怖がたまらない。 閑話休題、新たな「真の恐怖」に出合うには? 「そういう訳で、本当に怖い話が聞きたいんだよねー」と友達に愚痴ると 「じゃあ、講談が一番よ。私怖くて眠れなかったもん!」 はて、講談とはなんぞ? いきなり出てきた耳慣れない単語に首を傾げる。 どうやら落語の一種らしい。 日頃、落語はほとんど聞かないが、それは試してみなくては、と役者の名前を聞いて、アプリで試聴してみる。 流石は落語家、語り部のプロ。 題材は古典で、結末もわかっているのに、独特のテンポの良さが加わって、ぐいぐいと話に引きずり込まれる。 そう!そうなの!これが私の求めていた恐怖なのよ!と、怪奇講談をどんどん聴き漁っていく。 そうして、今日も真夜中に落語家が打つ「バン!ババン!」という小気味良い、張り扇で釈台を叩く軽快な音が私の部屋に響き渡るのだった。
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