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「だっ、大丈夫……まだ熱があるみたい」
下畠は熱で幻覚を見ているのだと思った。
「まだ少しあるわね、2~3日は大変だってお医者さんも言ってたからね、学級閉鎖になったから安心してゆっくり休んでなさい」
体温計を見て熱が下がったのを確認して安心した様子で母は部屋を出て行く、
「ひふっ! 」
下畠が短い悲鳴を上げた。
くるっと後ろを向いた母の背に黄色い服を着た女がしがみついていた。女は腰の上辺りからは消えていて上半身だけが見える。その首が異様に長い、下畠は首吊りだと思った。
「あっ、あれは……幻覚…………じゃない」
ドアを閉めて母の姿が見えなくなる。下畠の頭に幼い頃の記憶が蘇る。
「優しくなんかない…… 」
母の後ろからニコニコと笑っていた優しいおばちゃんだと思っていたのはこの女だと、ニコニコではなく恨めしげにニタニタと笑っていたのだと、幼かった下畠には笑顔の区別が出来なかったのだ。
その日以来、高校生になった今まで女は見ていない。
あの女は何者だろう? 母とどういう関係なのか気にはなったが下畠さんは怖くて今も聞いていない。
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