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生きている人間じゃなかったと分かったが新垣は少しも怖くはなかった。
男の子は優しかったのだ。虫取りをしたときもザリガニ釣りをしたときも危ない場所は教えてくれた。山に入って遊ぼうと言ったときには危ないからダメだと叱ってくれた。独りぼっちだった新垣と一緒に遊んでくれたのだ。
「ありがとう、私ね、もう独りぼっちじゃないよ、友達いっぱい出来たよ」
新垣は青い靴を拾うと話し掛けた。
『謝らなきゃダメだよ』
男の子の声が聞こえた気がした。
「うん、わかった。明日謝る」
嫌な事とは友達と喧嘩したのだ。新垣が悪いのではないがついカッとなって言い返して喧嘩になった。
新垣は青い靴を雨に濡れないように火葬場の出入り口の横の窪みに置いた。
「ありがとう、また来るね」
新垣は墓地を後にした。男の子と会いたいと思ったが正体を知った今は会ってはいけないような気がしたのだ。
大人になった今でも母の実家に寄った際には必ず山の墓地の火葬場へ行くという。
あの男の子が何者なのかは分からない、山の墓地の何処かに眠っているのかも知れない、何者であろうと新垣さんにとっては大切な友達なのだ。
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