第五話 池の畔の社

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 ムキになった土谷が確かめようと社の扉を開くとみかん箱ほどの空間にお地蔵様が置いてあるだけだった。 「何で? お爺さんは…… 」  お化けだと思ったがお爺さんはいつもニコニコ笑っていたので怖くはなかった。だが何となく土谷は社には近付かなくなった。  その後も池で遊んでいるとニコニコ笑いながらお爺さんが社に入っていくのを時々見たが小学校を卒業する頃には見る事は無くなった。  土谷が中学2年生になった頃、地区の再開発が決まって田畑が宅地に変更されて池も埋められて公園になった。  池を埋める際に近くの神社から神主が呼ばれて盛大な地鎮祭が行われたのを土谷も覚えている。池の畔にあった小さな社は公園の守り神としてそのまま置かれる事になった。  高校を卒業する頃には周りの田畑は全て建物に変わり池があった事なども忘れられていく、新しい住民たちも引っ越してきて町そのものが古臭い田舎町から都会へと変わっていった。  時は流れ、大学生になった土谷がサークルの飲み会を終えて終電も無くなった深夜に歩いて家へと帰っていると喉が渇いて我慢できなくなる。 「飲み過ぎたかな……喉がカラカラだ」  あと100メートルも歩けば家なのだがどうしても我慢できない、自動販売機があるのを思い出して公園へと入った。     
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