第五話 池の畔の社

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「酔い醒ましにちょっと休んでいくか」  出入り口の横にあった自販機でスポーツドリンクを買うと公園に入る。  ベンチに腰掛けて飲んでいると人影がやって来るのが見えた。こんな夜更けに誰だろうと構えているとお爺さんが土谷の前を歩いて行った。 「誰だ? 引っ越してきたのかな」  近所では知らない顔だと見ていた土谷の前でお爺さんは公園の隅にある小さな社へと入って消えた。有り得ない、人が入れるほどのスペースなど無いのだ。 「あっ! あの時の…… 」  頭の中に幼少の光景が蘇る。池で遊んでいるときに時々見た老人だ。 「でも……何で………… 」  土谷は慌てて立ち上がると逃げるようにして公園を出て行った。  社に入っていったお爺さんは昔見た穏やかなニコニコ笑顔ではなく真っ赤な顔をして歯を食い縛って怒っていたのだ。  翌日、気になった土谷は公園で何か無かったかとそれとなく母親に訊くとあの公園では子供が何人も怪我をしていると教えてくれた。  あの老人は何者なのだろうか? 池の畔の社は水神様を祀っていたという、その池が無くなったのだ。地鎮祭をしたとはいえ水神様から水を奪ったのだ。     
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