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不思議な言葉を頭から振り払う。
「そっか。ハーフなの?」
アパートの階段を上り、玄関扉に鍵を差し込む。
「クオーター。でもおじいちゃんが名前をつけた」
「そうなんだ。いい名前ね。散らかってるけどどうぞ」
少女を通して玄関扉を閉める。鍵まで閉めて、本当に少女を部屋へ上げてよかったのだろうかと改めて思う。
でも他に少女を預けられる場所も、空いている飲食店もここらにはない。
無防備な少女を外に放り出す冷たい真似はできなかった。
靴棚の鍵置きに鍵を置く。
少女が脱いだパンプスは意外にもきちんと揃えて隅に置かれていた。
「何か飲む?お茶と水と…牛乳しかないけど。紅茶にしようか」
着ていたジャケットをハンガーにかけ、バッグをクローゼットに入れながら尋ねる。
「紅茶がいい」
「そのまま座ってて」
鍋に湯を沸かす。うちにはヤカンがない。ティーパックをかろうじて二つあったカップに入れる。
「私の部屋にいるって連絡してあげて。きっとご両親心配してるだろうから」
「わかった」
ちらりと振り替えるとラグに座ったフィガロはうつむいてスマホをいじっている。
時計は23時を過ぎていた。子供が出歩くには遅すぎる時間だ。
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