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 日が暮れてしまったので宍道湖ドライブは翌朝に延期して、こうなればふたり旅をとことん楽しもうという気持ちになって、僕たちは松江駅近くのイタリアンレストランでピッツァやパスタを盛大に食べ、湖畔沿いの道の駅で一泊することにした。  道の駅に到着し、トイレで洗面を済ませた後、車のリアゲートを開けて寝支度を整える。前列シートを手前に倒すと、大人でも十分に寝転がれるスペースが確保できる。そこに折りたたみ式のすのことベッドマットを敷けば、ベッドルームの完成だ。 「すげー。しかも結構寝心地いい」  早速ベッドに寝転んだ帆夏がゴロゴロしながら嬉々としてはしゃいでいた。その姿を横目で見やりながら、僕はルーフボックスからソロテントを取り出す。  路上に黙々とテントを設置し始めた僕の姿を見て、帆夏は不思議そうに「なにしてるの?」と訊ねてきた。 「車内にふたりはさすがに狭いし暑苦しいだろ。僕はこっちで寝るから、帆夏はそっちで好きなように過ごして」 「……え、やだ」  一瞬の間の後、か細く耳に届いたつぶやき声に振り返ると、帆夏は口を尖らせて僕を睨み付けている。 「狭くても暑苦しくてもいいじゃん。こっちで寝ようよ。だって、ひとりじゃ俺淋しいよ」  そう言って勢いよく起き上がった帆夏に腕を引かれ、「こっち!」とベッドマットに押し倒されてしまう。  仕方ないので「分かった、分かったから」となだめながら僕は立ち上がり、設置したソロテントを片付けると、ふたたびルーフボックスにしまった。タオルケットと毛布を取り出し、帆夏に向かって投げつける。 「風邪引かないように、腹に掛けて寝ろよ」  まるで親戚の少年を預かって面倒見ている気分だ。帆夏はまた「はーい」と間延びした返事をして、満足そうに微笑むと、ふたたびベッドマットに横たわった。
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