0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
ヒカリさんはにっこりと笑うと杖を頼りに椅子を見つけて私に隣に座るようにと言ってきた。
なんで見ず知らずの人の隣に座らないといけないのかな?
それでもヒカリさんが早く、と急かすので隣に腰掛けた。
「偶然の出会いなんだから話しぐらいしたいじゃん。付き合ってよ」
「あんまり人と話すの、好きじゃないんだけど」
「平気だよ、ここでした会話なんて生きてればいつか忘れるからねー」
ヒカリさんはおかしな人だ。いつか忘れる話なら、最初から話さなくていいじゃないか。
私の考えを聞きもせずヒカリさんは自分のことを話してきた。
「少し前に事故に遭って目が見えない。ぼんやりと影は見えるけど、この子がないと道を歩くのは自殺行為」
「大変だね」
「あはは、全然心入ってない。でもまあ、人の痛みはその人じゃなきゃ分かんないもんね。
レイはなんでここにいたの?お見舞い?」
きたか。そりゃあ話していけば病院にる理由も聞かれるよ。
小声で下を向き「心の病気」とだけ言っておく。
うつ病とか自我障害とか、言ったところで「辛いよね」とか「でも前を向けば元気になる」とか言われるだけ。
「ふむ。下向くの楽しい?ほら、さっき下ばかり見てた、て自分で言ってたでしょ」
「前向くのに疲れただけ。だって大人はほとんどいうの「このままでいいの?」とか「将来どうしたい?」とか」
「それが分ったらレイ、あなた治ってます」
「ふふ、そうだよね?ヒカリさん不思議。私の気持ち見えちゃうの?」
ヒカリさんは足を組んで背もたれに体をそらせて上を見ている。
いや、ヒカリさんの場合はなにか見えることはないのか。
最初のコメントを投稿しよう!