チョコレートはいらない

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「とりあえず、オメってことで」 「ってことで」  そう言って、俺と小林はガツン、とジョッキを合わせる。そして、喉を鳴らしビールを飲む。ああ、なんて幸せな瞬間なんだろう。 「おー、いい飲みっぷり」  爽やかな喉ごしと爽快感に酔いしれていると小林は言った。ジョッキを下ろした俺はふわっとした心地で返す。 「そりゃあ、念願叶ったりですから」 「ほんとおめっとさん」 「小林も。ありがとうな」  小さく拍手されて俺は誇らしい気分になる。だって、ついにやったのだ。一目惚れしたお姉さんとの接触を果たした。付き合える保証はまだ無いが、あの態度を見るに可能性はあるだろう。正直かなり浮かれている。コンビニでの恋なんて、絶対に叶わないと思っていたのに信じられない。俺が絶賛片想い中だということは小林に話してあったので、小林も自分のことのように喜んでくれているのも嬉しい。 「少女マンガみたいなこともあるんだな……」  お通しを摘まみながらしんみり、俺は呟く。だって本当に夢のようだ。
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