チョコレートはいらない

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 初めてすれ違ったとき、綺麗な人だな、そう思った。同期にはいないタイプ。飾らない、そして芯の強そうな感じが良かった。  だから、その小さなレジ袋の中が気になった。昼食にしてはかさがなさすぎる気がしたから。明日は一本早く来よう、そう思った。ストーカーまがいだけど、彼女が何を手に取るか――小柄でグラマーな彼女の体は何でできているのか見てみたかった。  翌朝、雑誌コーナーに待機し、自動ドアをチラチラ見ながら彼女が来るのを待った。彼女が迷い無く進んだので、慌てて雑誌コーナーを離れた。そのままの勢いでさっさと買い物を済ませてしまいそうな感じがしたからだ。そして、ぎりぎり、彼女が商品を手に取るのを見た。有名企業のビターチョコレート二箱。そして、そのままレジに向かって会計をする。少しラフだけど、爪なんかはきれいに整っていて。颯爽とした感じがまたかっこいいと思った。ああなりたい、とも。そして気づけばそのまま恋に落ちていた。
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