3人が本棚に入れています
本棚に追加
どうやったらお近づきになれる? 頭の中はそれで一杯だった。オフィス街とあっちゃどこの企業かなんて特定できない。あの後、とりあえず、と真似して買ったビターチョコレートはほろ苦くて自分には合わなくて消費するのに時間が掛かった。でもその分、彼女のことがもっと強く印象付いた。
声を掛けるには自信も勇気が無い。口下手だからナンパなんてできないし、和むって言われるけどそれで引っかけられるわけじゃないし。それに、彼女はそういう浮わついたことに興味が無さそうに見えた。
でも、お付き合いしたい。相当な本音だ。無理ならとりあえず彼女に意識してもらえるようになりたい。せめて釣り合うような男になりたい。
そんなことを思いながら翌日、彼女の後を追ってチョコレート売り場へ向かった。その日も彼女は迷い無く同じビターチョコレートを二箱手に取った。あとをつけているのがばれないように、とっさにその隣の商品を二箱取った。それが同じメーカーのミルクチョコレートだった。そのとき、あ、と気づいた。こうしていれば不自然でなく彼女の近くに居れると。
最初のコメントを投稿しよう!