チョコレートはいらない

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 ミルクくんの話を同期の五十嵐ねねにしようと思ったのは、第三者のジャッジが欲しかったからだ。  私とミルクくん、アリかナシか。簡単に言えば、そういう話。  普通に考えれば「ナシ」な気がする。コンビニで顔を合わす程度の年下の青年なんて。  でも、ミルクくんの存在に気づいてからは、近くで会えた日には仕事が捗っている気がするし、実際チョコレートの減りが遅い。午前で一箱いかないときもある。彼を感じたらそれだけ、仕事を頑張れるみたいだ、と気付いた。  だからもし「アリ」で、ミルクくんと付き合えたら。  話は一気に飛躍するけれど、かなり充実した毎日を過ごせるのではないだろうか、なんて期待してしまう。仕事も上手くいって、もちろん私生活も充実して……今のちょい枯れの生活ががらりと変わるんじゃないか。そしてそれこそが本来あるべき姿なんじゃないか、とか思ったり。  でも、自分からガッツリいくには勇気がいる。だって彼みたいに若くないし、かなりご無沙汰で自信がないのだ。ましてや名前も職場も、声すらも知らない、顔見知り……と呼ぶにもおこがましいレベル。  ルックスに自信がない訳ではない。ご無沙汰だったのは仕事最優先でいたからで、たまに合コンに出ればお声はまだ掛かるし、女として最低限の美容レベルは保っている。こちらは準備は整っている状態だ。  そこで、五十嵐に「ミルクくんも気になってるんじゃない?」とかどこか「アリ」な、そういうことを言ってもらえれば。  そうしたら、私はより良い生活のために自分から一歩を踏み出せるだろう。
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