チョコレートはいらない

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「なー、小林!」  俺はオフィスに戻るなり同期の小林のデスクにずかずか進んだ。先に戻っていた小林はもう午後の資料の準備をしている。 「おつ、遅かったじゃん」 「やべー、やべーんだけど!」  興奮して何から話せばいいかわからない俺を小林は怪訝な顔で見ている。 「おら、千葉! 五分前行動はどうした?」  後ろから声がした。振り向けば先輩が席に戻るところだった。 「すみません、すぐします!」  そう言って俺もすぐに席に戻り、書類を取るふりをしてこっそりバッグの中でスマホを起動させる。そして、アプリを開いて小林にメッセージを送った。 「やばい」 「朝のおねーさんと喋った」 「てか笑顔ギャップ萌え」 「とりあえず終わったら飲み!」  ジリリ、始業のベルが鳴る。俺は打つだけ打ってそのまま奥へと放り、代わりにチョコレートをひとつ取り出すと口に放り入れた。ずっと想っていた彼女のとのことを反芻しながら食べる甘い味のチョコは夢のように優しく蕩けた。
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